還暦過ぎまして、お恥ずかしいことに最近の出来事に関して物忘れが激しくなってまいりました。でも不思議と昔のことは忘れにくいのか、なにかの拍子にふと思い出すこともいろいろとあります。
今朝ほど、味噌汁を作りまして、具は大根とにんじんと油揚げにしたのですが、大根とにんじんを切っておりますときに、ふと京都に修行に行く当日のことを思い出しました。
必ずではないとは思うのですが、大抵の修行僧は、修行に出る日の前日にはその市内に入り、市内の法衣店に一泊させていただき、お世話になります。そして翌日は朝食をいただいて、そこから修行道場に出発するのです。
私の場合は嵐山の天龍寺にて修行いたしましたので、前日は京都市内にあります神田法衣店というお店にお世話になりました。出発の日の朝、朝ご飯には大根とにんじんのなますが出まして、神田法衣店のおばあちゃんに、「これからのことを考えるとご飯は喉を通らないでしょう。残しても大丈夫です(修行僧は出された物は絶対に残してはいけないルールがあるのです)。ただそのなますだけは全部食べなさい。大根とにんじんはそれぞれご両親を表しています。あなたのご修行を案じているお二人に感謝しつついただきなさい」とか、そんなことを言われたのを覚えています。大根とにんじんの、どちらが父で母なのか、そこまでは覚えていないのですが、この二種の野菜を調理しますと、必ず思い出します。
大根とにんじん


